野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

総統と書記長と主席のおはなし

前から気になっていた「悪の出世学」、いってみました。

ヒトラースターリン、そして毛沢東という悪名高い20世紀の独裁者たち。もともと無名だった彼らが、いかにして頭角を表し、一国を動かす、いや世界を破滅させるまでにのし上がってきたのか、について史実をベースに検討する。
この、たとえばヒトラーだけではなくてスターリン毛沢東も加えて比較しながら考察する、というのがこの著者中川氏のいつもの手法ですな。どいつもこいつもヒドいのだけど、特にスターリンはすごい。狂ってるとしか思えない。疑わしいやつらを粛正していったらそりゃ誰も残らなくなるよな。
一方でウィーン時代のヒトラーニートぶりが、なんだか妙に微笑ましい。美術学校(画家志望だったのだ!)を不合格になったのが不服で学長に面会を求め、「画家は無理だけど建築は才能あるんじゃね?」とか言われて真に受け、でも特に建築の勉強をするわけじゃなく、親の遺産で、本を読んだり絵を描いたり建築図面をひいてみたりオペラを観たり、なんていう優雅な暮らしをしていたという。でもこのころは「苦悩と修業」の時代、ということになっており、だからウィーン嫌いになり、ドイツ民族至上主義につながった、っていうんだから逆恨みにもほどがある。あ、全然微笑ましくないな。
いずれ「マイン・カンプ」を読んで、アドルフの言い分も聞いてみないとな、と思う次第である。