野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

一日二杯は時代おくれでっせ

ついに痛風を発症してしまい、しかしながら10日ほど消炎鎮痛剤を服用し痛みが去った後の医師の診立ては「尿酸値は正常範囲内であり服薬により下げるほどでもない、よって経過観察」となった。


まあ無闇に薬飲むのもな。それにしても、そんなアホほどビール飲んでいるわけでもない(発症の前日には中瓶ビール一本と餃子とニラレバ炒めを食べたけど)のに痛風ってか。と嘆いているところに『痛風はビールを飲みながらでも治る!』などという衝撃的なタイトルの本を紹介いただいた。

著者は酒好きの痛風専門医。わたくしなど足下にも及ばないレベルで長年にわたりたくさんのお酒を召し上がっているうちに、ある日突然痛風の発作に見舞われたらしい。見事な「紺屋の白袴」ですな。
しかしこの著者、飲酒量だけでなくビールその他の酒(そしてプリン体リッチな各種の食品)に対する愛も並大抵ではない。痛風発症すなわち禁酒しなければならない(ご自身がずっと患者にはそのように指導してきた)、となったことによる絶望感に打ちのめされつつも、いやいや本当にビールはアカンのか、痛風の原因はビールだけではないはず、つまりビールを飲みながらでも治療する方法があったりするんちゃうんか、ということで自分自身の身体により各種の実験を積み重ねた。そしてついに、痛風への対処における画期的な方法論を見出した、というわけだ。
いわく、ビールはプリン体を含むので痛風を悪化させるので飲んではいけない、というのはガセである(ここ最重要)。
いや、ガセというのは言い過ぎかもしれない。ビールがプリン体を含むのも、他の酒に比べて含有量が多めなのも、またプリン体が尿酸値を上昇させ痛風の原因となるのも、すべて事実である。が、ビールを飲むことによる尿酸値上昇への寄与は、他の要因に比べると小さい、むしろ適量であれば飲んだ方が良い(ここも重要)ということのようだ。
大量の飲酒は尿酸値を上昇させる。これは著者ご自身の、そして後に有志の協力者による人体実験から確認された事実である。しかしながら、それはアルコール摂取量によって決まり、プリン体の量との関連は薄い。
となると問題は、いったい「大量の飲酒」とはどの程度を指すのか、ということになる。それは具体的に示されており、1日あたりビールでロング缶3本、日本酒3合程度、とのことである。
一方で「適量」はビール750ml、日本酒1.5合、ワイングラス2杯、といったところ。
実は尿酸値に影響するのは、大量の飲酒によるアルコール、ストレス、そして肥満である。したがい、体重をコントロールして肥満を避けられているのであれば、上記の「適量」程度の飲酒はストレス軽減にもつながり、むしろ尿酸値を下げる効果がある、ということになる。
すごい話だ。福音としか言いようがない。これで安心してビールが飲める。

ちなみに、人によっては強いストレスにさらされてしまうような事情というのもあるわけで、どれだけ生活習慣に注意しても、やはり高尿酸血症そして痛風を避けられなかったりもする。そのような場合には投薬治療も選択肢となる。が、これも尿酸値が高くなっている原因というかメカニズム(尿酸の産生過剰か、腎機能の不全か、あるいはその複合か)を個別にきっちり把握したうえで、適切な種類の薬を服用しなければならないらしい。
今回は「経過観察」になっているが、わたくしの場合も投薬治療となった場合、ちゃんとその辺を見極めたうえで薬を処方してくれるんだろうか?
そもそも、先日のあの親指の痛みは、本当に痛風だったのだろうか?この本を読んでからというもの、そんな疑問が湧いてきた。
血清尿酸値は血液検査をしないとわからないので、医師ではないわたくしには調べようがないが、尿のpHなら市販のキットで自分でも検査できるようだ。ちょっと検査キットを入手して、しばらくモニターしてみようかなと思ったりし始めているところだ。