野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

スカスカですねえ

先日読んだ『ある男』に、こんな一節があった。

ずっと先延ばしにしていたクリスマス・ツリーの飾りつけを今日こそしようと、彼は、富樫雅彦菊地雅章の美しいデュオのCDをかけながら、その作業に取りかかった。
(中略)
また少し飲もうかと思ったが、菊地のピアノだけで演奏される破格の<AII The Things You Are>が始まったところで、しばらくその場から動きたくなくなった。
時間が、ゆっくりと解体されてゆくようなテンポだった。旋律が、一滴ずつ、澄んだしずくとなってしたたり、静まり返った室内に、幾重にも波紋を広げていった。

何だそれ。二人とも名前は聞いたことがある程度で、その演奏についてはまったく知らない。いったどんな曲なのか、無性に聴いてみたくなった。
アルバム名に関する情報はまったく無かったが、富樫雅彦菊地雅章のデュオで、"All The Things You Are"が入っている、というヒントだけで、「CONCERTO」というアルバムであることは比較的簡単に特定できた。
しかしながら、このアルバムはApple Musicでは聴けない。
どういうことよ。
このアルバム、すでに廃盤になっているらしい。幸いにして、YouTubeでは聴くことができた。"All The Things You Are"だけでも聴けるし、アルバム全体も上がっていたりする。
大丈夫かこれ、と思いつつ聴いてみると、なかなか良い。
しかしYouTubeってのはご存知の通り、途中で何度もCMが入るので、音楽を聴くのに適しているとは言い難い。
そんなわけで、Amazonで中古CDを探したら見つかった(ブックオフオンラインだった)ので注文したのが先週のこと。

注文の翌日には発送されたのだが、運んでいるのは日本郵便。まあ時間かかりますわ。
でも一応は月曜日に到着し、それから聴き倒しているところだ。
なんかすごいな。とにかく音がまばら。
普通こういうのって、即興演奏なんかだと特にだけどとにかく音を詰め込み倒すバトルのようになりがちだと思うのだけど、とにかく音数が少ない。あれ、大丈夫ですか?ちゃんと演奏してます?と心配になる。
けど、確かに美しいな。ちょっとキースジャレットっぽいインプロがあるかと思うと、フレーズやヴォイシングには、どこかドビュッシーのような雰囲気もあったりして。
そりゃあね、動きたくなくなるかもね…