野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

マヨネーズ使うのはあり、みたいです

『土を喰らう十二ヵ月』という映画をちらっと見て、うわージュリーもずいぶんおじいちゃんになったのだな、と驚いた。というのはまあ置いといて、なかなか面白そうな映画である。原作、というか原案は『土を喰らう日々 我が精進十二ヵ月』というエッセイであるらしい。じゃちょっとそいつを読んでみるか、ということで。

映画のような話は出てこない。葬式の仕切りを押し付けられて大量の胡麻豆腐を作ったり、筍を煮たらそれを嗅ぎつけた松たか子が食べにきたり、というようなことは起こらない。
そりゃそうだ、原作ではなく原案なのだから。
それでも原案であるから、上記の胡麻豆腐も筍も、そして里芋もほうれん草も梅干しも、すべて出てくる。いずれの話も非常に興味深い。
そして、料理がみんな、それは美味そうなのだな。
映画の方の料理を担当した土井善晴せんせは、「おいしい」にも、「日常の無事を喜ぶもの」、「お祝いの喜びを楽しむもの」、「感性を通して喜ぶもの」、「本能を楽しませるもの」、「本能の快楽をともない、視覚・味覚両面の造形を楽しむもの」などいろいろある、と『味つけはせんでええんです』に書いている。このエッセイに出てくる料理はどれも「日常の無事を喜ぶもの」であり、時に「本能を楽しませるもの」であると思う。
著者が少年時代に修行をしたという禅寺においては、庫裡を走り回り、とにかく手持ちの食材をかき集めてなんとか料理を作るのだそうだ。すなわち「馳走」である。そして、食材の廃棄を極力少なくし、手間をかけて調理する。これが「精進」であると。なるほどねえ。
今ならタラの芽の天ぷらなんかが美味いんじゃないかな。