野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

熊野ってちょっと面白いかも

大石誠之助?誰それ?内蔵助じゃなくて?
と、まず思ってしまったのだが、実在した人物なのだそうで。
Wikipediaで調べると、社会主義者であり、医師である、と書かれている。
幸徳事件で処刑された12人のうちの1人である、とも。
幸徳秋水、聞いたことあるぞ。大逆事件っていうのも。
…てな具合の知識だったのだ、わたくしの場合。恥ずかしながら。
大石誠之助とその周辺の人物、そして大逆事件にいたるまでの経緯についての物語が『太平洋食堂』という小説だ。

アメリカ、インドに留学し医学を学んだだけでなく、料理人の経験もあるという、ちょっと変わった経歴と、どこか人を食ったようなキャラクターの大石誠之助が、何とも魅力的な人物として描かれている。
その社会主義思想や人権思想も、頭でっかちな理論ではなく、本能的なというか生理的なものから来ている感じがまた良い。
おそらく中学校ぐらいで習ったであろう(そして全く記憶にない)大逆事件について、その背景からわかりやすく説明し、なるほどこういうことだったのかと改めて理解できるのもありがたい。
それにしても何だ、現在の我が国を見ると、120年前とそう大きくは変わらないんじゃないかと思えるところがあったりするのが、どうにも恐ろしいことでありますなあ。