ベタでもいいじゃないか

「謎解きはディナーのあとで」という小説、単行本が出た時にずいぶんと話題になりましたな。ふーん、と思いながらも気になっていた。いよいよ文庫化されたので読んでみたわけですよ。

謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)

どうも最近、こういうテイストのミステリーがやたら出てきて、ちょっとどうなのよそれ、と思っていたのだが… それでもやっぱり、面白いもんは面白いな。資産家のお嬢様が刑事で、その執事がお嬢様からの又聞き情報に基づいて事件の謎解きをする、といういわゆるアームチェア・ディテクティブものだ。お嬢様が刑事、というと、筒井康隆の「富豪刑事」を思い出す。資産家の刑事が、湯水のごとく金を使うことで難事件を解決する、という話だ。しかしこちらの主役は執事の影山だ。広告等に出ていた決め台詞(?)「お嬢様の目は節穴でございますか？」に象徴される慇懃無礼ぶりが何とも言えない味わいを出しているキャラである。他に、麗子お嬢様の上司でありこれまた「風祭モータース」の御曹司であるところの風祭警部のスカタンぶりも、ベタではあるがやっぱり面白い。だいたいがもう風祭なんていう名前を使うもんだから、ヴィジュアルが完全に「YAWARA！」の風祭進之介で固定されてしまうのだよ。わざとやってるのかなこれ。