成田からシカゴまでの10時間ほどのフライトで、映画を2本と本を一冊。最近WOWOWでドラマ化されたというので書店で平積みされている「震える牛」が何だか面白そうなので。
「社会派警察小説」という触れ込みで、お題は食品偽装問題にグローバル資本主義ですな。タイトルから想像されるように、BSE問題がもちろん絡んでくる。
- 作者: 相場英雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/05/08
- メディア: 文庫
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以前読んだ「資本主義という謎」によれば、資本主義というのは辺境(フロンティア)からの蒐集(コレクション)を「より速く、より遠くへ、より合理的に」という価値観で行うシステムであると言える。これを徹底的に追求し、その規模がグローバルになったときに起こる問題。というのはいろいろと指摘されているのだが、食品偽装問題というのはそのひとつだろう。本書で「焼畑式商法」と表現されていたが、巨大資本による地方への郊外型ショッピングモールの出店と地域で細々とやっていた「小商い」の淘汰、みたいな話もそうだ。
この小説はもちろんフィクションなのだけど、登場する企業やそこでやられていることなど、あまりにもリアリティがありすぎる。
お題はなかなかハードだが、小説としてはかなり面白く、まあ一気読みですな。主役の冴えない刑事・田川の地味だけど着実に犯人を追い詰めて行く様子は、なんだか「1Q84」の牛河を彷彿とさせる。あまり小難しいことを考えず、単純にミステリー的にとして読んでも十分に楽しめるんじゃなかろうか。昨年ベストセラーになっていたとは知らなかった。うかつなことだ。
それにしても、面白い本だが飛行機で読むのはあまりお勧めできない。機内食が気持ち悪くて食べられなくなるから。