野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

とりあえず買っとく

内田樹という人の書いた本は、だいたい何でも面白い。だから新書か文庫で出ていれば、ほぼ無条件に買ってしまう。「知に働けば蔵が建つ」が文春文庫の新刊になっていた。

知に働けば蔵が建つ (文春文庫)

知に働けば蔵が建つ (文春文庫)


ウチダ先生は、わたくしが日頃から漠然と感じていることや、なんとなく違和感をおぼえていること、などについて実に的確に書き表してくれる。「そうか、そういうことだったか!」と思うことが多い。それだけではなく、今までまったく気付かなかったことにまで言及され、眼からウロコが落ちることもある。そして、それらを適度に難しい言葉を使って表現するのだ。ここ、けっこう大事なところじゃないかと思う。一般には難しいことを平易な言葉で誰にでもわかりやすく説明するのが良い、とされているし、それには僕も同意する。だけど、言葉が簡単だったらわかりやすいか、というと必ずしもそうじゃないんじゃないかとも思うのだ。易しい言葉というのは、汎用性が高いぶん、切れ味が悪いというか、ある特定の概念について説明するのに多くを語らなければならない。それでもつねにどこか言い足りなかったり、あるいは言い過ぎたりする部分が多いと感じる。一方で、ある種の言葉は、適切に組み合わせて使えば、物事を非常にうまく、簡潔に述べることが可能なことがある。そしてそういう述語は、「ちょっとだけ難しい」場合が多いように思う。ウチダ先生の本は、そのあたりの「ちょっと難しい」具合が、大変良い塩梅になっているのだ。おそらくこれは個人差があるのだと思うが、読んでいて非常に快適なのだな。
そんな感じで書かれたこの本、元ネタはウチダ先生のブログで、しかも内容はだいたい他の本で読んだことのあるようなものばかり。でもわざわざそんな本を買うのはもったいない、とはちーっとも思わない。知ってる話なのに、その「読んだことのある話」とはまた違ったかたちでインスパイアされることがある。面白いもんですな。