以前「知的生産の技術」を読んで、どうもこの梅棹忠夫という人は、なかなか面白いけれども、漢字を廃止して全部ローマ字表記にしてしまえ、とか無茶苦茶なことを言うなあ、と思ったものだ。
んで今回、「梅棹忠夫 語る」を読んでみて。
- 作者: 小山修三
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/09/16
- メディア: 新書
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いや面白い。なんとも痛快である。聞き手の小山修三さんのさりげないツッコミも味があるし、何と言ってもこの破天荒なくせにクールな梅棹せんせいの語りがたまらない。
和辻哲郎をつかまえて、「ほんまに大スカタン」とばっさり。丸山眞男の講演は「こんなあほらしいもん、ただのマルクスの亜流やないか」と席を立って出てしまう。権威主義を毛嫌いし、いわゆるインテリに対しては「一般民衆をバカにしている」と手厳しい。そしてインテリの原型は江戸時代にできている、それが当時の知識階級であった武士である。現代のインテリは言ってみれば武士の後継者であると。以下のやりとりがちょっと面白かった。
小山 でも、形式のよさを言う人は多いですよね。たしかに、武士というのは一種の規範をつくってますよね。新渡戸稲造が書いた『武士道』という本なんか、どう思うんですか?
梅棹 読んでへん。
小山 (笑)この無視ぶりはひどいな。読んでてくだらないというのは、まだいいほうで、「読んでへん」と言われたら、とっかかるところがもうない。英語で翻訳もされて……それでトム・クルーズ主演の映画(「ラストサムライ」)になって、また売れたという『武士道』でっせ。
梅棹 話は聞いて知ってるけどな。
ちなみに上記の引用において、梅棹せんせの発言がボールドでしかも大きなフォントになっているのはなにもこのわたくしがわざわざやったのではなく、もとの本がすでにそうなっていたのだ。あまりこういうのをやられると、ちょっとあざとい感じがしてしまったりするものだが、この本では、まーそういうのもアリだわな、ぐらいなもんだ。
いやホンマ、自由なお人ですなあ。