先日の出張の帰りに、鷲田せんせの「京都の平熱」を読んだ。
JR京都駅を出て、七条通から東大路通へ、それから高野川を渡り北大路を経て千本通を南下する。そして後院通、大宮通、塩小路通を抜けて再びJR京都駅まで戻ってくる。というルートで京都市内を一周する京都市バス206番。ときどき寄り道をしながら、この路線にそって散歩し、思索をめぐらす。京都生まれの京都育ちである鷲田せんせによる、京都案内である。
- 作者: 鷲田清一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/04/11
- メディア: 文庫
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もちろん鷲田せんせが書いているのだから、浮かれた京都案内本では決して無い。だから京都の「平熱」なのだろう。他所の人たちが京都に対して抱いているステレオタイプなイメージを崩しながら、京都という都市の特殊性、京都人のメンタリティについて解説する。それは例によって鷲田せんせ独特の、さっと読んだだけではどうも理解できずあちこちに引っかかりながら、でもなんとなくあの味わいを楽しみたくなる(そういうのを受け付けない人にはキツいと思う)、そんな文体で語られる。
これを読んでいたら、レヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」を思い出した。鷲田せんせが京都について、そして京都人について語る様子が、なぜかあの本を連想させる。なかなか楽しい一冊でございました。