野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

そろそろ行きたいですな

『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』を読み、タルマーリーにも何度か行った。
あのパンは美味い。わたくしの友人は「パンの概念が変わる」と言っていた。その通りだと思う。
しかし「腐る経済」に書かれているのは、まだ岡山県の勝山に店があった頃の話だ(文庫版のあとがきには智頭町に移ること、ビールも作ることについて触れられていたが)。
そうこうするうちに今度は『菌の声を聴け』が出た。よりによってミシマ社からだ。そりゃ読まんわけにはいかんだろう。

パンに関しては「腐る経済」の時からさらに、色々と進化しているようだ。わたくしは智頭に移転してからのパンしか食べてないから、どういうふうに進化したのかはわからないが、まあ普通のパンではないのは確かだ。
そして今やビールも作っている。わたくしも何回か飲んだ。ビールも美味いのだ。車でないと行きにくい店なので、その場で飲めないのが残念だが、買って帰って飲んでも十分に美味い。しっかりした味で、普通のビールのようにぐびぐび行く感じではなく、じんわり味わいたい。ボトル一本ぐらいでもけっこうな満足感がある。
その、パン造りにおける進化のプロセスは試行錯誤の連続ながら、とにかく手当たり次第にあれこれ試しているわけではない。様々なアイデアのきっかけ自体はちょっとしたアクシデントだったり思いつきだったりするのだが、現象をじっくり観察し、仮説を立て、実験で検証していくという、科学的なアプローチが取られている。そして数々の「常識では考えられないこと」がアウトカムとして得られるわけである。
常識は疑ってかからないと、などとベタなことはあまり言いたくない。が、あらためて考えてみれば、たいていの「常識」ってのはとある前提のもとに成り立っていて、実はその前提は誰かの都合に合わせて設定されたものだったりする。
だから、その誰かの都合なんて気にする必要が無くなった時、まさに「常識では考えられないこと」が起こったりするわけだ。
そんなブレイクスルーが満載の一冊。まことにエキサイティングですね。