野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

そこらじゅう異界だらけ

何でまたそんなもんを… という感じだが、Kindleストアで『異界と日本人』なんていう本を見つけて、ついうっかりダウンロードしてしまった。

異界、というとずいぶん大層な、というか、おどろおどろしい感じがするが、実は意外と馴染み深いものだったりもするようで。
浦島太郎の竜宮城も桃太郎の鬼ヶ島も竹取物語の月も、みんな異界だし、さらには神隠しや、狐に化かされて見る幻影も、異界と言える、と。
そして、異界から出て我々の住む現実世界に現れる者たちがつまり、鬼であったり妖怪であったりするわけだ。
文明化が進むにしたがって、日本人の異界観も変わっていき、異界からの訪問者である妖怪の「キャラクター化」が進んだ、つまり妖怪の由来への興味は失われ、図像化・見世物化し娯楽として消費されるようになっていったのだそうで。
一方で、統治者にとっては、異界からの訪問者による脅威を取り除くことが権力の正統性を示すことにつながり、そのためには自身の権力の及ばない「異界」を措定する必要があった、という指摘も興味深い。「この構図は現代でも変わっていないように思われる」と書かれている。わたくしもそう思う。
そんなわけで、何となく読んでしまったけどもずいぶん面白い本だった。