野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

考えてもわかりゃしませんよ

単行本で邦訳が出た時に話題になり、ちょっと気になっていたルシア・ベルリンの『掃除婦のための手引き書』が文庫になった。

さっそく買い求めて読んでみたのだが、各方面からの好評価のように、手放しで絶賛する、という感じではなかった。
退屈だったわけではない。何なのだこれは、という困惑、とでも言ったら良いのだろうか。
ほんの数ページのものから、長くて20〜30ページほどの短編たちには重なり合う部分が多く、連作小説かと思いながら読んでいったのだが、どうもそういうわけではない。
どうやらみんな、作者の実体験に基づいた別の物語だ。いやしかし、いくら脚色があるとはいえそんな無茶な、と言いたくなるほどにカラフルすぎる作者の実体験は、極彩色で目がちかちかしてくる。
繰り返し現れてくるそれらのエピソードは、いったいどんな気構えで読むべきなのだろうと、ある種の混乱に陥りながら、しかしそれは必ずしも不快なものではない。それがつまり、もっとも近いと感じられる日本語を探すならば困惑、ということだ。
理不尽とか不条理みたいなもので全身をざりざりされて不愉快だし落ち着かないのに、何かを超越して自由な感じ。
何なんだこれは。結局はそういうところに落ち着く。いや、落ち着いてないけども。