野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

イングランドの化け物料理

佐藤優といえばロシア、なのだけど、彼が外務省で最初に語学研修で行ったのは意外なことにイギリスなのだそうだ。その時のホームステイ先にいた12歳の少年グレンとの交流を中心にした回想録、という体裁の「紳士協定」。

紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)

紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)

グレンとミスター・サトウの間で、それぞれ学校の宿題を手伝い合うという関係ができあがり、それが「紳士協定」というタイトルの由来なわけだが、それにしてもイギリス人中学生にラテン語を教えることができるなんてすごいぞミスタ・サトウ。相手が中学生(グラマー・スクールというらしい)だからと言って子供扱いしない。対等の関係で付き合う、というのがいかにも、という感じでさすがは知の怪物、知的誠実さというのはこういうことであるよなあ、と思ったことである。
ちなみにマサルちゃんけっこう食い意地が張っていて、彼の本を読むとけっこう食べ物に関する話がでてくる。この本では特に、イギリスではどんなものが食べられるのか、ということがかなり克明に記述されている。とりあえずフィッシュ・アンド・チップスはやっぱりねという感じだが、ビネガーをつけて食べるとは知らなんだ。またラザニアは危険、シュリンプ・カクテルとエッグ・マヨネーズ無難(ほとんど手を加えていないから)というのも貴重な情報だ。あと気になるのはやはりステーキ・アンド・キドニー・パイだな。文字通りステーキとモツ(腎臓ね)の入ったパイ、なのだが、本格的なやつはこのキドニーがアンモニア臭くてとても食べられたもんでは無いらしい。日本ではちゃんと血合いを取り除くとかの下処理をするが、彼らはそのまま煮込んでしまうから臭いのだ。でも慣れるとこれが旨いだとかなんとか。
その他にも「戦場のメリークリスマス」をグレンと観て、その解説をするあたりも興味深い。
そんなこんなで、実にいろんな読み方ができる面白い本だった。