『十二国記』の世界では、あらゆる生き物は木から果実として生まれてくる。王を見つけ、仕える麒麟もしかり。ただし麒麟の場合は「蓬山」にある木の果実としてうまれ、女怪たちに大切に育てられるのだそうな。ところがこの世界では時々、蓬莱(こちらの世界)と一部が混ざり合う「蝕」という現象が起こる。この蝕によりせっかく実った子供の果実が蓬莱に流されてしまう。蓬莱に流された果実は、どこかの母親の胎内で育ち、普通に産まれてくる。『風の海 迷宮の岸』の主役である泰麒はこのパターンで、蓬莱に流されて10年後に見つかり、蓬山に戻されたわけだが、麒麟として育てられるべき10年分のロスがある。本来ならばその10年の間に神獣の姿に転変したり、あるいは妖魔を折伏して使令としたり、てなことをやらないといけなかったのだが、なにぶん蓬莱で普通に育てられたもんだからそんなことやってるわけがない。だから麒麟としてはかなりポンコツ、というわけだ。
風の海 迷宮の岸(下) 十二国記 (講談社X文庫―ホワイトハート)
- 作者: 小野不由美,山田章博
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/04/20
- メディア: 文庫
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ちなみに、今回のお話にも慶国の麒麟、景麒が出てくるけど、これは時系列からすると『月の影 影の海』に出てくる、陽子を連れ帰る景麒の先代であり別人(別麒麟?)のはずだが、何となくキャラが似ているような。景麒は代々ツンデレなのだろうか?
などとアホなことを考えつつ、この下巻もあっという間に読んでしまったのでございました。