野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

無くてもたぶん困らない

わたくしが大学生の時のことで、細かい内容までは思い出せないのだが、シュレーディンガー方程式を解くのだか固有値を求めるのだか、とにかくそんなことをしようとしていた。ところが解けない。というか解き方がわからない。
とある論文ではその答えを「留数定理」により導き出していた。
何なんだ留数定理って。
研究室の先輩に留数定理って何ですか、と訊いたら、複素解析で使う難しいやつや、と教えてくれた。
その答えを「お前には十年早い」と解釈したわたくしは、それ以上追求することを断念した。今のようにスマホでググればWikipedia複素関数論について調べたり、YouTubeで解説動画を見たりすることができる時代ではなかったのだ。
それ以来、本件については三十年以上にわたってモヤモヤし続けていたが、特に困ることはなかった。
なぜ今ごろになって、という話だが、複素関数論について勉強してみることにした。まあ勉強すると言ったって、ちょっと適当な教科書でも読んでみるぐらいのところだ。で、Amazonで「複素関数」で検索して出てきた中で評判良さそうだったのが、『道具としての複素関数』だ。

「道具としての」とタイトルにあるように、数学的な厳密性よりもイメージ的な理解を重視し、図を多用したり例題を豊富に掲載して、難解な複素関数論を応用で使えるようにした、とのことだ。
そのコンセプトは良いと思う。
しかし、数学的な厳密性は求めないとしても、記述は正確にしてほしいものだ。
端的に言って、間違いが多すぎる。数式も含めて、わたくしのような素人が見ても明らかにおかしい部分が少なくとも4〜5箇所ある。
よく知ってたらまあそれでも良いのかもしれないけど、初めて知るような内容で、かつ直観に合わないようなことが書かれている時に、それが複素関数論の難解さの所以であるのか、単にガセであるのかいちいち悩まされ、かなりのストレスを感じる。
あと、証明もかなり雑というか手抜きというか。三角関数の加法定理について

[証明]三角関数の定義、及び三平方の定理から証明できます。(証明終)

とか、ふざけんなよ、という感想しか出てこない。
いや、「複素関数論について知る」という目的は、ある程度は達成できたと思う。今まで知らなかったことを知り、理解することもできた。その一方で、個々のセクションで解説していることはわかるのだけども、それをより大きな文脈で捉えた時の意味、みたいなものがもひとつ理解できず、その辺も結構フラストレーションを感じる。
コンセプトは良いと思うんだけどな…
夏休みにブックオフ行きだな。