野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

コオロギはノーサンキュー

ジャック・アタリの名前は知っているが著作はまったく読んだことがなかった。
それで最初に読むのが『食の歴史』、というのが適切なのかどうかわからんが、とにかく。

驚いたことに、本書のほとんどの部分、ざっと75%ほどが、本当に人類の「食の歴史」についての記述で占められている。それも、ホモ・サピエンスが登場してから現在に至るまで、世界中で何を、どのように食べていたかについての、網羅的な記述だ。
はたしてそれがおもしろい話なのかどうかは別として、とりあえずそのボリュームとカバレッジに圧倒される。
食と権力、食とコミュニティ、食と文化、その他諸々。
長きにわたって、食事はコミュニケーションの場として重要である、というのは、新型コロナの蔓延により「黙食」を強いられている今読むと、改めて色々と感じるところがありますわな。
食の歴史に関して、基本的には客観的な(少なくともそう信じられている)事実を淡々と述べているだけ、なはずのに、そこはかとないスノビズムがどうしても漂ってしまうという、この辺がいかにもフランス人っぽい(偏見?)。
終盤4分の1ほどの、いわゆる「食の安全」にかかわるトピックに至っては、そりゃあもう。でもそんなに目新しい話はなくて、だいたいどこかで聞いたり読んだりしたことのある内容かな。
とりあえずわたくしの生きている間には、あまり昆虫食は普及しないでほしい。