わたくしが日本語を使い始めてから、かれこれ50年以上経つ。しかし、言い間違ったり空耳したり誤解したりさせたり、てなことが起こらない日はない。
日本語って難しい。
いや、日本語に限らないだろう。およそ人間の使う言葉というのは、何語であれ難しいものなのだ。
どこがどう難しいか、というのは『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』を読めばわかる。
けれども機械に言葉を理解させるというのは、やっぱり難しい(というかほぼ不可能)なのだ。
いやそんなん無理やろ、とわたくしはつい思ってしまうのだが、それがなぜ難しいのか、というのを説明するのもこれまたけっこう難しい。
その辺の事情を、この本は「働きたくないイタチ」が「言葉がわかるロボット」を作ろうとする試みを通して、豊富な実例で説明してくれる。
イタチが次々に出くわす数々の難題は、我々が言葉の運用において日常的に陥る罠、性懲りも無く犯す過ちのショーケースである。
非常にわかりやすい。と同時に絶望的な気持ちにもなる。いや、ここは絶望するのではなく希望を持つ(あるいは安心する)ところなのだろうか。
言葉を(完全に)理解できる機械を作るのはやはり不可能だと思う。
機械に学習させるための教師たる人間そのものが、そもそも間違ってばかりいるのだから、当たり前だろそんなもん。