野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

まさにイタチごっこであると

わたくしが日本語を使い始めてから、かれこれ50年以上経つ。しかし、言い間違ったり空耳したり誤解したりさせたり、てなことが起こらない日はない。
日本語って難しい。
いや、日本語に限らないだろう。およそ人間の使う言葉というのは、何語であれ難しいものなのだ。
どこがどう難しいか、というのは『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』を読めばわかる。

史上何回めかの人工知能ブームが来たと言われて、かれこれ6〜7年は経つだろうか。今は機械学習、ことにディープラーニングによって、いよいよ本気で使えそうなところまでたどり着いているように感じる。
けれども機械に言葉を理解させるというのは、やっぱり難しい(というかほぼ不可能)なのだ。
いやそんなん無理やろ、とわたくしはつい思ってしまうのだが、それがなぜ難しいのか、というのを説明するのもこれまたけっこう難しい。
その辺の事情を、この本は「働きたくないイタチ」が「言葉がわかるロボット」を作ろうとする試みを通して、豊富な実例で説明してくれる。
イタチが次々に出くわす数々の難題は、我々が言葉の運用において日常的に陥る罠、性懲りも無く犯す過ちのショーケースである。
非常にわかりやすい。と同時に絶望的な気持ちにもなる。いや、ここは絶望するのではなく希望を持つ(あるいは安心する)ところなのだろうか。
言葉を(完全に)理解できる機械を作るのはやはり不可能だと思う。
機械に学習させるための教師たる人間そのものが、そもそも間違ってばかりいるのだから、当たり前だろそんなもん。