野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

そんなに昔の話でしたか

『ねにもつタイプ』を初めて読んだのは、もう14年近くも前の話だ。

それですっかり岸本ワールドの虜になってしまい、以来『なんらかの事情』、『ひみつのしつもん』と新作のエッセイ(の文庫版)が出るのを待ち構えて読んでいる。
しかしながら『ねにもつタイプ』は単行本を貸してもらって読んだので、文庫は読んでいない。これは具合が悪い。なぜならば、岸本さんのエッセイは、文庫化される際に必ずボーナストラックが追加されるので、単行本を読んで終わり、ではなく、文庫が出れば改めて同じ本を読まねばならない。
というわけで今回、『ねにもつタイプ』を14年ぶりに再読することにした。

14年も前のこととはいえ、あれだけ衝撃を受け、激しく心惹かれた内容を、ほとんど何も覚えていないということに驚いた。
したがって、どれがボーナストラックとして追加された部分なのか、さっぱりわからないのだが、別にそんなのは大した問題ではない。とりあえず、これを単に「エッセイ」と呼んでしまうのはちょっと雑すぎるかなという気がしてきた。
現実と妄想のあわいをふらふらと揺蕩い、少しずつ現実感覚に歪みが生じていく。そうこうするうちにイノセントでヴァイオレントな何かがちらほらと見えてくる。そうやってトリップするためのテクストだなこれは。