仏教、というかお寺関係では多くの符牒があって、そのうちのひとつ、お金のことを「化蝶」というのだそうだ。そして「散華」というのは供養のために花を撒くこと。
だから、「化蝶散華」というのはお金をまき散らすという意味になる。
- 作者: 玄侑宗久
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/05/11
- メディア: 文庫
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いつもの玄侑宗久さんの小説のパターンで、主人公は禅僧だ。それもお寺に生まれたのではなく、煩悩だらけの一般市民が、とあるきっかけでどこかの寺に転がり込む、ないしは弟子入りして僧侶になる。ある日そんな禅僧の身辺に起こるちょっとした事件。まあそんなところだ。
で今回のテーマは「お金」。仏教に限らず、一見、宗教には縁がなさそうなふりをしながらも、実際にはそれ無しには何も語れない、という代物だ(ちなみに縁がなさそうなふりをしているのは宗教のほうだが)。
主人公は大学で経済学を学び、そして先物取引にはまり、あろうことか両親の貯金にまで手を付けて一億円ちかい損害を与えたという強者だ。それだけに、彼のお金に関する考察にはある種の説得力がある。仏教の枠組みにとらわれず、キリスト教からマルクスやケインズの経済理論まで総動員する。結局なんなんだときっちり答えが出たわけではない。それでも、「あーそうか」という気分にはなる。なんとも不思議な小説だ。