野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

夏休みの自由研究2021

先日読んだ複素関数論の本が少しばかり残念な出来で、もうちょっとマトモな、でもイカツすぎない本はないだろうか、と探してみたところ『複素関数論の基礎』が良さそうな感じだった。

こちらは「当たり」だと思う。多分に相性はあるのかもしれないが、なかなか良い本だ。
各Chapterの初めには、そこでカバーされる内容についての大まかなストーリーが記されている。これが非常に良い。
文章はなかなかユニークだ。少しばかり癖が強い、とも言える。あれほど頻繁に感嘆符が書かれている数学の教科書は見たことがない。もうちょっと落ち着いたらどうだ、とたしなめたくなる。が、『ファインマン物理学』も、ややそういうテイストがあったなそういえば。数学の中でも特に美しいと言われる複素関数論であるから、その美しさを語るにあたって興奮を抑えるのは簡単なことではないのかもしれない。
そしてわたくしも、なるほどそういうことなのか、とか、え、そんなんできるんですか、と感心したり悩んだり、と、まことにエキサイティングな一冊なのである。
ちなみにこの前に読んだ本の一番の残念ポイントはとにかく間違いが多いことだが、本書ではちゃんと出版元のウェブサイトで正誤表が公開されており、その辺も好感が持てる。さらに演習問題もなかなか充実しており、その解答もまたウェブサイトに掲載されているという手厚さだ。
この盆休みは雨とコロナのせいで、ほとんど家にこもって演習問題を解いていた。やはりこの手のものは、読むだけでなく実際に自分で手を動かして初めて理解できるものなのだなと実感した。
一冊まるごと理解できたとは言い難いが、この本を読む前に比べると格段に理解レベルが上がった、というか新しい武器を手に入れたという感じがする。この武器があると、今まで敵前逃亡を繰り返していた電気回路とか光学とか制御とかその辺の理論にも立ち向かえるようになるはずだ。
もっとも、今からそんなことが本当に必要になるのかはかなり疑問であるが、まあ何となく気分が良いから、とりあえずはそれで十分だ。