野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

神風なんて吹かない

元寇、っていうのは、蒙古(元)軍が日本に攻めてきたんだけども、暴風雨(いわゆる神風ですな)にやられて帰っていった。ってなぐらいの理解しか、わたくししてなかったんですけどね。
実は話はもう少し複雑で、そして謎も多いんだそうですね。
蒙古軍は対馬壱岐を襲った後に博多湾から上陸したにもかかわらず、その日の夜には撤退し、船に乗って帰ろうとしたが暴風雨に遭って壊滅した、というのが通説であるらしい(知らんかった…)。
それに対して、いやいや何でわざわざ上陸しといてすぐに撤退するのよ、とか、文永の役って今でいうところの11月で、そんな時季に台風は来まへんで、とか、まあ色々と言われているらしい。
それに対して、船の設計をしていたというエンジニアが、可能な限りのファクトを集め、船舶に関する専門知識やその他諸々を最大限に活用してロジカルかつ科学的なアプローチにより、その謎を解いた。いや、解いたわけではないけど、謎を説明するに耐え得る仮説を構築し提出する、というのが『日本史サイエンス』の内容だ。

お題は、

  • 蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか
  • 秀吉の大返しはなぜ成功したのか
  • 戦艦大和は無用の長物だったのか

の三本立て。
船舶に関する専門知識は、これらのお題に対してどのような知見を与えてくれるのか、ということだ。もっとも、最後のやつは、別に日本史の謎でもなんでもないように思うが、まあそこはそれ。
実は、船舶だけでなく、相当に広範囲にわたる分野の知識と綿密な調査、さらに緻密な計算と深い考察によって繰り出される仮説は、なかなかに興味深い。やれランチェスター戦略だAHPによる意思決定だなんてものまで持ち出してきてくるあたりにやや衒学趣味を感じられ、少しばかり鼻につかなくもないが、その思考プロセスはエキサイティングでもある。
オタクをナメたらあかん。いや本当に。